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未曽有の人手不足にどう立ち向かうか?!
VOL.4 導入で進むのは自動化
ではなく「セルフ化」

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海老原 嗣生

雇用のカリスマ(ヒューマネージ社顧問)

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中久保 佑樹

ヒューマネージ 『HR AGE』編集長

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海老原 嗣生

雇用のカリスマ
(ヒューマネージ社顧問)

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中久保 佑樹

ヒューマネージ
『HR AGE』編集長

このコーナーは、『HR AGE』編集長の中久保佑樹(株式会社ヒューマネージ)が、雇用のカリスマ・海老原嗣生氏の胸を借り、世間一般で言われる雇用問題について、何が正しいのかをテーマごとに集中連載で解き明かして行きます(ヒューマネージ代表・齋藤亮三も同席)。節々に人事・雇用に必要な基礎知識を盛り込み、ニュース解説のようにご覧いただけて、かつ経営・人事に必要な“眼”につながる記事を目指しました。多少の脱線はありますが、私自身、このハードな筋トレのような集中連載を通じて、データ、事例、政策、法律…世界や歴史を見渡した本物の知識を身につけていきたいと思います。人事の皆さまにとって、少しでもお役にたてば幸いです。

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齋藤 亮三

ヒューマネージ代表取締役社長

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齋藤 亮三

ヒューマネージ代表取締役社長

それ、大きな誤り!

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人事なら給与や手当については当然知っておくべきでしょう。今年は大型減税も実施されるため、給付や源泉などが複雑になります。そのあたりも含めて、今回の政策について、少し考えてみることにしましょう。

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この10年、AIで仕事はなくならなかった

中久保:少子化の話を突き詰めていくと、外国人材の受入れと、生産性の低い企業の淘汰、そして、流通・サービス業の高額化による事業縮小、この3つが処方箋となるのですね。やっぱり、夢が無いなぁ…。

齋藤:とどのつまり、今までとは生活を変える、ということなんだろう。外国人材登用が増えれば、日本人同士のなあなあな働かせ方はできないし、飲食代が上がれば、自炊を増やすなど生活パターンを変えねばならないし。

海老原:実は少子化による人手不足対策としては、あと一つ大きなものが残っています。

中久保:ほら、一発逆転の特効策があるんでしょ?やっぱり。

海老原:まあ月並みなんだけど、AIの活用で業務を自動化すること。

中久保:ほんとうに月並みですねぇ。

齋藤:それ、中久保の言う通り、掛け声倒れで一向にうまく行ってませんよね。オックスフォードや野村総研のレポートで「仕事は半分なくなる」とか騒がれましたけれど。

海老原:あの2つのレポートは色々問題があるんです。私が2018年に上梓した「AIで仕事がなくなる論のウソ」で詳しく書いているのですが、おさらいしておきますね。まず、レポートはメタ分析という手法で、少数サンプルの仕事で「自動化が可能か否か」分析を行い、それをもとに他の多くの仕事について類推する、というものなんです。しかもその大元の少数サンプルについても、雇用の専門家ではなく、AIやメカトロのプロに「自動化できるか」聞いただけ。それも、費用対効果は考えず、単に「可か不可か」の話をしています。つまり、ハズレて当然な話なんです。

AIで自動化が進まない3つの理由

中久保:じゃあ、やっぱり「AIで自動化」なんて無理じゃないですか。

海老原:そこ、掘り下げてみよう。なぜ、「AIで自動化」は進んでいないか。その原因を探れば、解決の方向性もわかるからさ。だいたい、以下の3つの理由になるかな。

(1)社会には自動化に向かないルールが多々あるから、それを変えねばならない。
(2)AIは単一の仕事には強いが、多種多様な仕事が絡み合う場合は、それぞれにAIを作る必要があり、手間がかかる。
(3)AIは「人工知能」だから、知的業務には対応できるが、モノを動かすとか整えるといった物理的作業や、対人折衝などはできない。

この3つが障害になっているんだ。

齋藤:思い当たる節がありますね。10年くらい前には、「宅配ドライバーなんてじきに、ドローンに置き換わる」と言われましたよね。でも、集合ビルやマンションなどは「番地が同じ」で配れない、とか。広い個人宅なら庭に荷物を落とすので事足りるかというと、雨ざらしになるから宅配BOXに入れねばならないとか。これは(1)にあたるでしょう。

海老原:そんな感じで、現実に照らし合わせると、ルールや慣行的に無理が多々ありましたね。続いて、(2)と(3)をケーキ屋さんの事例で考えてみましょう。店員は、こんな感じの仕事をしています。➀レジを打つ、➁ショーウインドウを磨く、➂商品を並べる、④商品を取り出す、➄商品を箱に入れる、⑥商品を包む、⑦商品にリボンをかける、⑧掃除をする、⑨飲食スペースがあれば配膳なども行う。これらすべて「別種の仕事」だから、それぞれにAIが必要になるし、さらに、物理的作業にはメカトロも必要になる。いくつかの作業は一つで対応できたとしても、それでも3~4種のAIとメカトロが必要になるでしょう。 

中久保:それじゃあ、バイトを一人雇う方がよほど安いし、現実的ですね。

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無人化って実は「お客に仕事をやらせる」仕組み

齋藤それでも、AIによる自動化が上手くいっている事例もありますよね。ファミレスで料理を運ぶロボットとか、かなり普及しているではありませんか。

中久保:猫型ロボットとか、うちの子にも大人気ですよ。

海老原:その事例!本当に興味深いんです。まずね、こんな配膳ロボット、大したAIは組み込まれていません。それこそ、ロボット掃除機の技術の応用で、20年前には作れていたはずです。では、この配膳ロボットの勝因ってなんだと思います?

中久保:猫型でカワイイことですか?

海老原:そんなのAIBOとか20世紀からあったわ!そういう外形ではなくて、実はね、配膳ロボットとは、サービス機軸のコペルニクス的転換を行っているんです。それは、ロボットが行っているのは運搬作業だけで、実際に料理を持ち上げて配膳するのは「お客さん」だということ。

齋藤つまり、気付かないうちに、大きくサービスレベルが下がっていたわけですね!

海老原:はい。もし、この配膳までロボットにやらせるのなら、それこそ開発に恐ろしいほどの時間と費用がかかったでしょう。そこを客にやらせたことが勝因です。結局、ここ数年でうまく行った「自動化」ってほとんどが、このスキームなんです。

中久保:確かに!スーパーの無人レジって、「レジ打ち」「支払い」「釣銭」「袋詰め」とお客さんにやらせまくりですね。居酒屋のオーダーがタブレットに変わったけど、これもそう。銀行はどんどん窓口を減らし、その分、ATMを増やしてる。それだって、お客さんに作業をやらせてるのに他なりません。最近じゃ、マイナンバーカードがあればコンビニで住民票や戸籍が取れるけど、これもやっぱり「住民が自分でやる」じゃないですか。自動化とか無人化とか、聞こえの言いこといってその実、全部、お客さんにやってもらっていたんですね…。

海老原:まあまあ(笑)。ここ10年での無人化の基本は、自動化ではなく、セルフ化だったんだよね。これに気づいた事業者は、人手不足を大きく乗り越えられたわけです。

中久保:やられたなあ…。

本物の自動化には、やはり「お金」がかかる

齋藤:でも一方で本当に自動化している事例もありませんか?例えばユニクロでは、カゴに商品を入れレジ台に置くだけで、瞬時に支払い金額が表示されますよね。これなんか、セルフ化ではなく、ちゃんとした自動化ですよ。

海老原:はい。ただこれ、AIではなく、RFタグを使って実現しています。このタグを商品に貼ると、電磁波などで自動的に値段や商品番号を読み取ることができるんです。ただ、タグ一つ20円とかするので、単価が安い商品だと、RFタグを貼ったら儲けが消えてしまいます。つまり、人件費は減るけどその分、結構お金もかかる。

齋藤:ひと昔前に中国で流行った無人コンビニが、今は全く見られなくなったのはそのせいですか。

海老原:そうなんです。日本でも高輪ゲートウェイ駅内に無人コンビニがありますが、これは別の技術を用いています。四方八方から監視カメラで撮影し、客が手に取ったものを画像認識する。加えて陳列棚に重量計を配して、商品を手に取ると棚全体の重量が軽くなることなども読み取らせます。こうした情報をもとに、「何をどれだけ買ったか」が把握される、と言うもの。

齋藤:聞いているだけで、とんでもない設備投資が必要なのが分かりました。現実的ではありませんね。

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AIは「事務」「士業」領域でこそ本領発揮する

中久保:結局、僕らは、省力化と言う名で仕事を押し付けられまくるのですか!?

海老原:人材不足を乗り切るためには、それも仕方ないんだよ。ただね、AIにより、セルフ化も高度になって社会は便利になっていくはずだ。再説するけど、AIは「コンピュータ内で完結する仕事」に向いている。つまり、事務的作業は代替可能性が高い。

齋藤:AIの画像認識は特筆すべきものがありますよね。顧客からの請求書ってその様式がまちまちではないですか。請求金額がどこに書いてあるか各社ごとに違うし、その内訳も「製品代」「お品代」「手数料」「フィー」などなど。今までは事務スタッフが確認して入力し直さなければなりませんでした。それが、AIで瞬時に自動入力できるようになっています。

海老原:そういう「コンピュータ内で完結する」作業はどんどん軽減されていくでしょうね。その延長で専門性の高い事務作業、例えば士業が行う業務もかなり自動化できそうです。実際、司法書士事務所のサイトでは、画面の指示に従って、自分で入力をしていくだけで、会社登記や移転などの下作業がほぼ完了してしまうものを多く見かけます。その分、費用は安く、実効時間は短くなり、とてもメリットを感じますね。B型肝炎訴訟や過払い金返還など弁護士業務でさえ、定型化しているものは、じき似たような対応になっていくでしょう。

中久保:えーと、事務や士業はAI代替可能性が高いから、子どもたちには選ばせない方がいいかも、と。

海老原:何メモしとるんじゃ!

「RPA+人手」で素人がプロ並みの実力に

海老原:「自動化+セルフ化」が人手不足解消の要点で、この方向に投資をすれば、これから10年程度は勝ち馬となれるとお分かりいただけたでしょう。その際「RPA」という言葉をぜひ、覚えて欲しいところです。

齋藤:RPAって「熟練した人しかできなかったことをAI化する」というような意味ですよね。

海老原:はい、私は簡単に「ノウハウのAI化」と呼んでいます。プロの技や思考はRPAに任せ、物理的な作業のみ人間がやる、という分業が進んでいくと読んでいるんです。

齋藤:それ、先ほどの「メカトロは高いから、その部分は客がする」のと同じですね。

海老原:おっしゃる通りです。例えば、ゴルフの個人レッスンを考えてみましょう。これ、教官型ロボットを作って手取り足取り指導させようと思ったら、気が遠くなるほどの投資が必要になるでしょう。でも、「ゴルフプロAI」を開発し、そのアプリをタブレットにダウンロードして、自分のショットを動画撮影すると、「どこが悪いか」画像付きで指導してくれる仕組みなら、実現できそうではないですか?

齋藤:つまり、AIに物理的作業は一切させない、というフォーメーションですね。

海老原:そうなんです。こんな感じで、ノウハウをRPA化し、足りない部分を人手がフォローするという形で、仕事がどんどん変わっていくと思っています。例えば、コールセンターなんか、問い合わせ内容をRPAが判断し、最適解を画面上に映し、スタッフはそれを読み上げるだけ、とか。花屋さんなら、切り方・生け方・包み方などをRPAが表示してくれるとか。農業だって、作物の熟れ方を見て、収穫すべきか否かをRPAが判断してくれるとか。

齋藤:つまり、全くの素人でも、即戦力になるわけですね。

海老原:そうなんです。結果、一人の人が多様な仕事に就けるようになり、そのことで、人手不足が緩和される、と。

中久保:素人でもRPAを使えば、その道のプロ並みに成果が上がるようになるんでしょう?だったら、その分、給料も高くもらえるようになるんですよね、ここ確認しときますよ。

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中久保:AIによるいろいろな自動化、僕もすっかり進んでいる気になっていました。

齋藤:セルフレジにセルフ配膳、私たちの生活に馴染んでいたから、確かに「AIによる自動化」ではないことに気づかなかったな。海老原さんが言っていたように「RPA化」がどんどん進むだろうな。

中久保:はっ!確かにそうですね!☻
(僕のノウハウを「RPA化」して中久保AIを作れば、仕事も2倍以上こなせて絶対給与アップだな……)

齋藤:ん?その顔は、なにか悪いことでも企んでいるな。

中久保:いやいや!そんなことないです!今すぐやらなきゃいけない仕事を思いつきました!

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