Story of Audio-Technica
すべての音を愛する人々へ
さまざまな音体験を創造し続けたオーディオテクニカ。
創業から唯一無二の世界的音響メーカーへ成長するまで、
その歴史を紐解きます。
カートリッジにすべてを懸けた創業
1962年、東京都新宿区で産声をあげたオーディオテクニカ。オーディオをこよなく愛する創業者 松下秀雄と従業員3名、バラック建ての家屋を借りてのスタートとなりました。
「音楽を聴くということは趣味というより自分の身体の一部である」と語るほど音楽鑑賞に傾倒していた松下。その情熱はカートリッジへと注がれ、開発設備へも惜しみなく投資。十分に整えられた環境で、技術者たちは研究に没頭しました。
その甲斐もあり、創業から5年目の1967年、高性能で高音質なVM型カートリッジの開発に成功。1人の技術者が心血を注ぎ作り上げたこの製品をきっかけに、世界へと進出します。1972年にアメリカ支社を設立すると、販売網はヨーロッパ・アジア各国へと拡大。瞬く間に世界的カートリッジメーカーへと成長しました。
「最良のオーディオ体験のために、技術開発にすべてを懸ける」創業時のその姿勢は現在へと脈々と受け継がれ、高品質で安定した製品開発の礎となっています。

MM型ステレオカートリッジAT-1 記念すべき第一号製品
音の入口から出口まで
カートリッジで世界シェア50%を占め、国内においてはトップメーカーとしての地位を確立していたのも束の間。1982年にCD(コンパクトディスク)が登場すると、あっという間に一般家庭へと普及します。オーディオ文化は、一気にデジタルの時代へ。アナログオーディオの人気は落ち込み、オーディオテクニカは危機に瀕します。
この苦難に終止符を打ったのが、1970年代から開発・販売をスタートし、のちに主力商品となるマイクロホン・ヘッドホン事業。音の入口から出口までの製品開発を担う総合メーカーへ、次なる飛躍のはじまりです。
1980年代、カラオケの大流行によりマイクロホンが、ポータブルオーディオプレーヤーの人気上昇と普及によりヘッドホンが、それぞれシェアを大幅に拡大。時代と共に変化する人々のリスニング体験のそばには、常にオーディオテクニカの製品があったのです。
こうしてデジタルへの移行に対応する一方で、アナログへの情熱の火は絶えることなく、原点であるカートリッジの開発も変わらず継続していました。

モニターヘッドホンの初期モデル
マイクロホンで世界のプロのステージへ
1984年、精密加工の技術力を結集し開発されたのが、小型のユニポイントマイクロホン。高い品質とニーズを捉えた性能が、大規模会議の多いアメリカで特に重宝され、東京宣言が署名された1992年の日米首脳会議にも採用されます。
マイクロホン技術はさらに躍進し、ユニポイントから派生した小型高性能マイクロホンが世界最大のスポーツイベントのアトランタ大会で採用。臨場感のある近接音の収音を可能にしたことで、スポーツ収音の常識を大きく塗り替えました。
オーディオテクニカのマイクロホンはその後も国際的なイベントで次々に採用され、世界的にも広く認知される存在に。2000年代にワイヤレスシステムマイクロホンが開発されると、大型の音楽フェスや世界的な音楽賞の授賞式など音楽のプロフェッショナルたちのステージへ活躍の場を拡げます。
さらに世界の音楽制作の現場では、コンデンサーマイクロホンの性能と品質が高く評価され、トップクラスのサウンドエンジニアたちが使用。微細なニュアンスを聴き分けるレコーディングのプロから厚く信頼される存在となりました。

発売当時、米国の専門誌に掲載したユニポイントシリーズ・マイクロホンの広告
幅広いユーザーに愛される製品たち
プロオーディオ部門が勢いを増す中、良質な音を求める一般ユーザーからの支持を得る製品が次々と誕生します。
1990年代後半に発売されたウッドヘッドホンシリーズは、他社製品にはない天然木の美しさと艶やかでナチュラルな音質が人気を博して大ヒット。音響機器に自然のぬくもりを込めた本シリーズは、時代に即した製品開発を進めながらアナログという原点を常に忘れない、オーディオテクニカというブランドを象徴しています。
2007年には、今では世界のプロが認めるモニターヘッドホンATH-M50が誕生。音質に加えて装着性や耐久性がエンジニアたちに評価され、各国の有名レコーディングスタジオでも採用されるようになります。高い性能を叶えながらもリーズナブルな価格であることから、プロのみならず一般ユーザーにも広く愛され、世界中でベストセラーとなりました。
ATH-M50は、用途や価格帯を問わず、質の高いオーディオ体験の提供を実現した誇るべき製品であるといえます。

世界中のファンに愛され続ける名品ATH-M50の後継モデル ATH-M50x
唯一無二の世界的音響メーカーへ
1962年の創業から音を楽しむ世界中の人々に愛され、カートリッジ・マイクロホン・ヘッドホンの3つの製品カテゴリーで開発・製造・販売を行う唯一無二の総合トランスデューサーメーカーへと成長。さらに2000年代後半からのアナログレコード人気の高まりを受け、ターンテーブルのシェアが拡大。国内外さまざまな場面でオーディオテクニカの製品が活躍しています。
プロオーディオのソリューションでは、鮮明かつ明瞭な音質が評価され、官公庁の会議室のマイクロホンに採用。アメリカの大統領討論会においても、マイクロホンとワイヤレスシステムが採用されています。さらに2019年には、MotoGP世界選手権のオフィシャルマイクロホンサービスソリューションプロバイダーに指名。オートバイ1台1台が放つ多様な音や臨場感あふれる摩擦音など、細かなディティールの収音を可能にしました。
こうして常に挑戦する姿勢を忘れることなく、“音を通して豊かさを届ける”という強い想いで開発を続けてきたことが、世界的な音響のパイオニアとしての地位を確固たるものにしています。

変わらない人間らしさ「アナログ」
カートリッジを祖業の製品として、数々の音響機器を世に送り出してきたオーディオテクニカ。創業以来、人間の感性・人間らしさこそが豊かさの根源であるとする独自の「アナログ」観を大切に培ってきました。
どんなに時代や環境が移り変わろうとも、この「アナログ」という人間中心の考え方を持ち続けること。それがあるからこそ音の可能性を信じ、ニーズに即した多様な音体験を創造していく。それがオーディオテクニカなのです。
