エイベックスが求める“異質を理解するクリエイター”

 

かつて、エイベックスには“独特な感性のクリエイターが多い”というイメージがありました。そして再び、そんな感性を求める時代が来ています。若く柔軟な感性を秘めた内定者と、音楽業界を見つめ続けてきた執行役員。そのふたりが、エイベックスがこれからつくりあげていく音楽事業の未来について語ります。

※内容は全て取材当時のものです

かつての音楽好き少女は、論理思考を備えたオタク気質の女子大生に

就職活動において「大学ではグラフィックデザインを専攻しています」と言われたら、多くの人が「就職するなら美術系の会社やデザイナーですか?」と尋ねるでしょう。

 

2019年3月現在、エイベックスで内定者として長期インターンを行う中南ひかるも同じように考えていました。エイベックスの会社説明会に参加するまでは――。

 

中南「大学では、人の心や行動をデザインと組み合わせて考えるヴィジュアルコミュニケーションデザインを専攻しており、将来はデザイン関連の仕事に就こうと考えていました。でも『そういえば、私は音楽も好きだったな』と思い出して。
たとえば、浜崎あゆみさんの『Voyage』のミュージックビデオ。子どもの頃、初めて観たときの衝撃を今でも鮮烈に覚えています。3歳の頃からエレクトーンを習っていましたし、自分でも歌うのが好きで合唱部にも所属していました。音楽には昔から親しんでいたんですよね」


自分の原点って、もしかするとエンタテインメントなのかもしれない。そう気づいた中南は、就職活動も方向性を広げていくことにしました。

 

そのなかで、エイベックスがインターンシップを実施すると知ります。彼女の眼には、エイベックスはオタク気質の性格を覚醒させることのできる環境に映りました。

 

中南「まずは、音楽 “だけじゃない ”ところが魅力的でした。想像以上に幅広いコンテンツに触手を伸ばしている会社なんだな、と。
私、オタク気質が強いんですよ。アニメが好きでアイドルも好き。もちろん音楽も、それにダンスパフォーマンスにも興味があって。そんな眼で見ると、エイベックスは幅広い事業のそれぞれのフィールドで “変化球 ”を投げているような会社だと感じました」


いわばその論理思考こそ、実は中南とエイベックスを結びつけていくきっかけになるのです。

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負けず嫌いと逆転発想で、インターンシップ参加権を勝ち取った

エイベックスでは、2017年度より新卒採用活動の一環としてインターンシップを実施しています。書類選考から企画立案の力を試され、通過者は1dayインターンシップに参加。そこでクリエイティヴ・アイデアソンと題した活動が行われます。

 

そこで企画力が認められたメンバーのみ、次のステップである長期インターンシップへ。そこで、エイベックスの社員とリアルプロジェクトに関わることになります。

 

中南「書類選考のお題は『エイベックスアニバーサリーイベントの立案』でした。私は、普段なかなかライヴに行けない人でも音楽に親しめるように、コンビニとコラボレートする企画を考えました。
コンビニなら身近だし、ひとりでも、深夜でも立ち寄れる。店舗ごとに異なるQRコードなどを展開すれば、ひっそりと収集する楽しみも生まれます。まさしく、日常の中でオタクの好むささやかな幸せを具現化する企画でした」


こうした感性は、1dayインターンシップでもいかんなく発揮されます。中南いわく、参加者はキラキラした女子大生が多かったそうで……。

 

中南「負けず嫌いだから絶対に勝ちたくて、戦略的に攻めました。企画テーマは『音楽 × リンゴ × 〇〇』。〇〇の中を自由に考えてプレゼンを行うというものでした。
私はこの〇〇の中に入る言葉を選ぶ際に、まずはりんごから連想しやすいワードをありったけ出して、それらから順にボツにしていきました。その中で最もトゲがあり且つ他者とテーマが被らなさそうな『炎上』というワードでプレゼンを行い、長期インターンシップの参加権を勝ち取りました」


オタク気質で、他とは一線を画する豊かで独創的な発想力があること。一方で、決して独りよがりになることなく、冷静な状況判断や体系的な考え方ができること。まさしく、中南はエイベックスが求めるクリエイターの資質を持ち合わせていたと思います。

 

エイベックス・エンタテインメントのレーベル事業本部長・執行役員である猪野 丈也はこう語ります。

 

猪野「一般論はいらないんです。我々はもっと深掘りした何かを持っている人材がほしい。その点で、中南さんは選考段階から常に名前の挙がる存在でした。
そもそもクリエイティヴ・アイデアソンはエイベックスとして初めての試みでしたが、すぐにでもリアルプロジェクトに使えそうなアイデアがたくさん出てきました。私たち自身も学びある機会だったと思います」


自らの力で参加する権利を手にした長期インターンシップ。中南はここでさらにビジネスとして音楽事業に携わる意味を、身をもって学ぶことになります。

「時代の半歩先を行く」重要性。レーベル事業の本質に触れて思うこと

会社説明会において、中南はエイベックスの代表取締役会長の松浦 勝人の言葉に大きな感銘を受けました。

 

中南「それは『時代の半歩先を行く』という言葉です。一歩先だと理解しきれずシャットアウトされてしまう。ちょっとだけ先なら、理解して興味を持ってもらえる……という考え方は、私にとって非常に納得感がありました」


そんなエイベックスへの納得感を持って長期インターンシップを行う中南。実際にエイベックス社員と働きながら感じているエイベックス社員の特徴について、次のように話します。

 

中南「楽しいことを追求する“ピュア”な心を持っている人が多いと感じました。それこそ、私たちのような若い世代の意見でもシャットアウトすることなくフランクに聞いて受け止め、フィードバックをくれる。コミュニケーションのキャッチボールが成立する充実感が大きかったです」


インターン生として、のちには内定者としてプロジェクトに参画していくなかで中南が意識していたこと。それは音楽業界に精通するエイベックス社員と、一般的な若者との橋渡しという役割でした。

 

中南「それはまさしく、業界のことをまだ深く知らない今しかできないことですから。特に、コンテンツに対する第一印象をベースとして、単純におもしろいかおもしろくないかを素直に述べること。
それこそ、私たちの提供価値だと思っていました。ですから今は第一印象をしっかりと言語化して記録しておくことを意識しています」


長期インターンシップでは「毎日がクリエイティブ・アイデアソンみたいなもの」と猪野が述べるほどに、難しい課題もたくさん言い渡されました。

 

猪野「こんなボールを投げたらどう返してくるか、実験的にさまざまな課題を投げかけました。逆に、我々の企画に対するユーザー目線はどうかと答え合わせする感覚でもありますね」


もちろん、ただ感覚で答えるのでは意味がありません。レーベル事業はビジネスである以上、実現可能性やマネタイズの視点が不可欠です。

 

中南「発想を具体化する難しさは常々感じていて、だからこそ、想いに走らず客観的な調査や裏付けを重視するようになりました。
どんなにおもしろそうなことでも、ビジネスとして成立させられなければ次の可能性につながりませんから。制約のなかで、会社側もユーザー側も納得できる着地点を企画するというバランスの難しさを体感しています」


実践に即したインターンシップで、中南はレーベル事業に携わるクリエイターとしての視点や発想力をさらに磨き上げていきました。

クリエーションで世界に挑め! 若い世代が拓くレーベル事業の未来

インターンシップを通して、中南は「自分には知識が全然足りない」と痛感しました。夢やアイデアを、具体的な提案に落とし込むための力が必要だ、と。

 

中南「ビジネスとしてレーベル事業に携わっていく以上、まずは社員の皆さんを納得させる発想力や提案力が必要ですね。伝わりやすくするために、デザインの知識やスキルも生かしていきたいです」


その言葉に、猪野も大いにうなずきます。

 

猪野「私が入社してからの約 20年、外的環境は劇的に様変わりしました。“音楽の聴かれ方”はすでに、根底から覆っております。
特に音楽業界はいろんな産業の中でもデジタル化も速いし、音楽というファイルの特性上、コンテンツが世界に到達するのも圧倒的に速い。そのスピードでビジネスも可変していくと認識し、動いていく必要があります」


その変化に追いつくためのフィールドは、机上にはありません。

 

猪野「たとえば、私の世代にとって音楽はモノに近く、所有する喜びがありました。でも、デジタルネイティヴは違っていて、今後は彼らの世代の感性やユーザビリティに合わせた音楽を提供しなければならない。中南さんらの若い感覚を吸収し、発展させる姿勢を大切にしたいですね」


日本のマーケットが縮小するなか、海外マーケットに焦点を合わせなければならないのは音楽業界も同じ。

 

我々が現在もっとも注力しているのは、“時間”と“国境”を拡大して、我々のブランドの認知をあげ、我々の音楽を聞いてもらえようにすることです。それに必要なのが、ネットワークをつくることとネクストカルチャーをつくることだと思っています。

 

猪野「アジア全土にマーケットの拡大を狙いつつある今、ローカルアイデンティティーを理解し、中国や東南アジアのカルチャーに詳しい人とはぜひ働いてみたいですね。
そして、異質な感性も備えていること。本当に新しいものは、すべて“異質”から始まります。その感性を理解し、実現する思考力と表現力、そしてビジネスとして体系化できるクリエイターを、エイベックスでは求めています。
さらに欲を言えば、言語はもちろんですが、デザインやシナリオライティングなどの表現技術や演出力を勉強していると良いと思います。
エンタテインメントの根幹を為すのは、いかに人の心に感動を呼び起こすかということ。自分自身が感じて、考えて、聞いてもらえる人や観てもらう人を感動させる設計をできるのが真のクリエイターだと思いますから」


エイベックスでは多様な事業展開をしているからこそ、本当におもしろいエンタテインメントなら360°全方向に展開できるインフラが整っています。強みはどこまでも深く、アウトプットの方法と方向は無限に広く――。

 

内定者が執行役員と渡り合えるのも、異質という共通項で結ばれているから。ぶつかり合い、磨かれ、洗練されていく大胆な発想で、エイベックスが進むべき“半歩先の未来”への道を描き続けていきます。

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