
Honda Story
創業者がつくり出した原点
~本田宗一郎と藤澤武夫が伝えたかったこと~
創業者がつくり出した原点
~本田宗一郎と藤澤武夫が伝えたかったこと~
やがて二人の願いどうりに会社は世界進出を果たし、同時に彼らの言葉もさまざまな形で広まり、
浸透して今も世界中のアソシエイトたちの進むべき道を照らしている。
そんな創業者の想いは、どのように育まれてきたのか。
「創業者がつくり出した原点」として、本田宗一郎と藤澤武夫が伝えたかったことについてご紹介します。Vol.05では、「三現主義」差ではなく違いを生む発想力と本質をとらえる実践主義を学ぶ。についてご紹介します。
5 「三現主義」
~差ではなく違いを生む発想力と本質をとらえる実践主義を学ぶ。
「これまでの僕は、常に自分の体験の中から真実をつかんできた。(中略)体験に基づいているということは、とても強いことなんですね。だから、体験のない人より、自信をもった判断ができる」(宗一郎)
“差”ではなく“違い”にこだわる
社是、基本理念、運営方針という3つの要素によって構成されているHondaの企業哲学。しかし、これはあくまで理念であり思想であって、ここから実際にHondaの個性あふれる製品や技術、企業活動が生み出されるには、さらにHonda独自の行動原理が必要となる。その代表的な例が絶対価値、そして三現主義だ。
三代目の久米是志社長は新製品の企画会議の席上、他社の開発状況などに話が及ぶと、たちまち不機嫌になって「それは相対的な話にすぎない。(中略)なぜ自分たちがこうなりたいと、絶対価値を言えないのか」と怒ったという。これは単に他と比較するな、ということではない。その話には最も重要なものが欠落している、ということなのだ。それが絶対価値、つまり“違い”である。
「差というのは、大きい、小さいとか主に数量的に表されるものです。
違いというのは、異質という意味です」(河島)
Hondaの開発に求められるのは、他より数値が高いというような差ではなく、お客様に飛躍的に大きな喜びを与えられる、質的な違いがあるかどうかなのだ。
「本田技研がここまで伸びてきた理由、原動力を考えてみれば、これは決して差ではなく違いにあったと思うんです」(河島)
“差”で他に勝ろうというのは、現在もついつい陥りがちな考え方であり、それを戒めてくれるのが絶対価値という概念だ。
現場・現物・現実の中にあるもの
一方、三現主義は開発であれ、生産であれ「現場に行って、現物に触れて、そして現実を知ること」――これは宗一郎が創業当初から、さまざまな表現で繰り返し言い続けてきたことだ。
「技術者にとって、自分の手でつくり、試すということは、どんなに科学が進んでも必要なことじゃないのかな。前提となる理論や計算はもちろん大切だけれども、やってみなければわからないこともある。頭の中や机の上の考えだけで、『やってもどうせダメだろう』と言って手を動かさないところからは、何も生まれない」(宗一郎)
現実を知るということは、理論上・計算上可能だったものをあきらめざるを得ない場合がある一方、不可能と思われたことが一気にクリアできる可能性も秘めている。
「『それはムリでしょう』とか、『おそらくダメでしょう』とかいった言葉は、『やってみもせんで、何をいっとるか』という一喝でけしとんでしまう。一見ムリなものが、ああやってダメならこうやってみろというねばりの前に可能性をもちはじめてくる」(宗一郎)
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社是を中心とした企業哲学を基に、従来とは飛躍的に異なる価値を持つ新技術や新商品を発案し、それを現場・現物・現実に照らし合わせることで問題点や改善点を見い出し、より良い形で社会に提供していく。
「なんでもいいから実行してみること、『ああやってダメなら、こうしてみろ』と工夫するところに、技術の価値と面白さがあるんです」(宗一郎)
この二つが徹底されているかぎり、Hondaの活動は今もしっかりと企業哲学を受け継いでいると言えるだろう。
次回Vol.06(最終回)では、変わり続けて残っていくもの。変わることなく進み続ける道。「受け継がれる哲学」についてご紹介します。
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