2026.9.18
ストレス耐性だけに頼らない職場支援──個々のコーピング特性を活かす方法
はじめに
「メンタルが強いと思っていた優秀な社員が、突然休職してしまった」
このような事態に直面し、戸惑う人事担当者もいるでしょう。しかし、従業員のメンタルヘルス不調の背景を、ストレスに「耐える力」の有無だけで説明することはできません。ストレスの感じ方や対処方法は一人ひとり異なり、職場環境や業務負荷などの要因も関係しています。
本記事では、心理学における「コーピング(ストレス対処)」の多様性を解説し、個々の特性を把握する方法と、それぞれに適した職場支援のあり方について紹介します。
1. ストレス耐性とコーピングの違いを理解する
従業員のメンタルヘルス対策や健康経営を推進するうえで、ストレスへの理解は欠かせません。しかし、ストレスへの対処を単なる「我慢強さ」として捉えると、個人の特性や職場環境に応じた適切な支援を見落としてしまうおそれがあります。
1-1. コーピングの種類とストレス対処のメカニズム
一般的に、ストレス耐性は「ストレスにどれだけ耐えられるか」という我慢強さとして捉えられがちです。しかし、心理学や組織行動学の視点では、ストレス耐性だけでなく、ストレスに対処するための認知や行動(コーピング)にも着目することが重要です。
ストレスの原因となる出来事や状況に直面した際、人は何らかの行動や認知によって対処しようとします。こうした対処のための取り組みをコーピングと呼び、その方法は人それぞれ異なります。
例えば、他者に相談して問題を解決しようとする人もいれば、一人の時間を確保し、物事の捉え方を変えることで気持ちを整理する人もいます。パーソナリティを単純に「良い・悪い」で評価できないのと同様に、コーピングのスタイルにも一律の優劣はありません。状況やストレスの原因に応じて、適切な対処方法を選択することが重要です。
1-2. 一律のストレスケアによって生じるリスク
コーピングの多様性を考慮せず、組織が一律のストレスケアや「我慢強さ」のみを求める管理を続けると、さまざまな問題が生じるおそれがあります。
個人の対処スタイルに合わない対応を強いることで、従業員が必要な支援を受けられず、メンタルヘルス不調や早期離職の兆候を見逃す可能性があります。また、採用時の適性の把握や人員配置において、本人のストレス対処特性と業務環境とのミスマッチが生じれば、組織全体の生産性やエンゲージメントの低下につながるリスクもあります。
2. 個人のコーピング特性を活かした職場支援
個々のコーピングスタイルを把握し、適切な個別支援や人員配置を行うためには、主観的な印象だけに頼らず、具体的な行動事実や本人の意向を踏まえた多角的なアプローチが必要です。
2-1. 行動事実からストレス対処力を把握する方法
採用基準の設定や面接において、候補者のストレス対処力を把握するためには、自己申告だけでなく、過去の具体的な「行動事実」を確認することが重要です。人の強みや成果の再現性を検討する際には、思考や性格に関する自己評価に加え、実際の行動や、その背景にある判断を把握することが有用です。
例えば、面接では「過去に仕事上のプレッシャーや困難に直面した際、具体的にどのような行動を取りましたか」といった質問を通じて、具体的な経験を引き出します。周囲に相談したのか、客観的に状況を分析したのかといった過去の行動事実を確認することで、候補者のコーピングスタイルを理解するための手掛かりが得られます。
なお、採用面接では、職務遂行に必要な適性や能力に関する質問に限定し、本人の病歴など、採用選考に不要な健康情報を収集しないよう配慮することが重要です。
2-2. 職場環境との適合性を高める個別支援
本人のコーピングスタイルを活かすためには、組織風土や配属先の環境要因とのマッチングを考慮することが不可欠です。
例えば、周囲への相談を通じて問題解決を図る人には、気軽に相談できる体制や、円滑にコミュニケーションを取れる環境が支援につながります。一方、一人で考えを整理することを好む人には、過度な干渉を避け、一定の裁量を持って課題に向き合える環境が適している場合があります。
ただし、対処スタイルだけで適切な環境を決めつけるのではなく、本人の意向や業務の特性、職場の支援体制も踏まえて判断することが重要です。個人のストレス対処特性と職場環境との相互作用を理解し、必要に応じて環境を調整することが、早期の適応と持続的な活躍を支える鍵となります。
3. コーピングの多様性を活かした組織づくり
従業員のコーピングの多様性を理解し、組織の力として活かすための要点は、以下の3点です。
-
ストレス耐性を我慢強さだけで捉えず、「ストレスに対処する力(コーピング)」にも着目する。
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面接や面談では、過去の「行動事実」を深掘りし、個人の対処スタイルを多角的に把握する。
- 個人のコーピング特性と職場環境との適合性を考慮し、それぞれの状況に応じた支援を行う。
一人ひとり異なるストレス対処のスタイルを理解することは、メンタルヘルス不調の予防にとどまらず、本人が能力を発揮しやすい職場環境の整備にもつながります。
適性検査などから得られるデータを参考にしながら、感覚だけに頼らない「構造化された視点」で多様なコーピングスタイルを捉えることが重要です。個々の特性と本人の意向を踏まえた職場支援を行うことが、多様な人材が健やかに活躍し続けられる組織づくりの基盤となります。
サービスのご紹介
適性検査『TG-WEB』のコーピング適性検査(G9)では、ストレスに対処する力やストレスからの回復力を測定し、個人のストレス対処特性を可視化できます。
さらに、ベーシックパーソナリティ適性検査(B5)では性格特性を測定し、組織風土や職務との適合性を検討するための情報が得られます。また、コンピテンシー適性検査(A8)では、過去の具体的な行動事実をもとに、成果につながる行動特性を把握できます。
これらの検査を組み合わせることで、主観的な印象だけに頼らない多角的な人材の見極めが可能になります。個々の特性を踏まえた人員配置やオンボーディング支援を通じて、従業員の定着と持続的な活躍をサポートします。
コーピング適性検査 G9
ベーシックパーソナリティ
適性検査 B5
コンピテンシー適性検査 Another8
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