052_thumb

2025.11.21

スキルより重要な“状況を変える力”とは? 市場価値を決める行動特性を見極める

はじめに

「優秀なはずなのに、思ったほど活躍しない」──そんな経験はありませんか?
履歴書や面接だけでは見えにくい“行動の質”こそが、採用の成否を左右します。特に、変化が前提となった今の時代に求められるのは、“整った環境で成果を出す人”ではなく、“環境を自ら整え、動かせる人”。
スキルや経歴だけでは測りきれない「状況を変える力」は、今やあらゆる職種で欠かせない要素になっています。
採るべき人材を見誤らないために、人事として何を見るべきなのか──。
この記事では、その判断軸となる「行動特性」の捉え方と、見極めのヒントをお届けします。

1px
1. 市場価値は“状況を変える力”で決まる

1-1. 資格やスキルよりも、行動特性が市場価値を決める

昨今、「市場価値の高い人材」「ハイパフォーマー」という言葉が溢れていますが、その基準は曖昧です。
資格やスキル、華やかな職歴が市場価値そのものだと誤解されがちですが、実際の現場ではそれらが成果に直結するとは限りません。
真に市場価値を決めているのは、“どのような行動特性を発揮できるか”です。

同じスキルを持つ人でも、

  • 現状に合わせるだけの人
  • 現状を変えながら成果を出す人
    では、生み出せる価値に大きな差が生まれます。

採用においては、スペックではなく 「どんな場面で、どの行動レベルを発揮できるのか」 を見極めることが、これまで以上に重要になっています。

1-2. 成果を生むのは「変化を起こせる人」

変化の激しい現代の環境では、成果は「状況を整えてから出す」のではなく、状況を自ら変えながら出すものになっています。

たとえば、

  • 課題の多いチームでパフォーマンスを維持する
  • 顧客との相性が悪くても成果を出す
  • 制約だらけの環境で、成果につながる工夫をする

これらはすべて、「状況を変えられる人」の特徴です。
一方で、与えられた状況のままでは成果が出ないという人は、環境依存型の働き方になりがちで、再現性も低く、投資価値も限定的になります。
企業が本当に求めているのは、 “その人が入ることで状況が良くなる人材” です。

1-3. 相対評価より、再現性ある変化を起こせる人材を見極めよ

単なる「優秀そうな人」ではなく、 どの環境でも一定以上の成果を生み出す再現性を持つ人材” が、現代の採用における真の優秀層です。

その再現性を担保しているのが、状況に働きかけて変化を生み出す行動特性です。

  • 自分の成功体験が通用しない場でも工夫できるか
  • 限られた条件の中でも前に進めるか
  • 他者を巻き込み、状況を改善しながら成果を出せるか

こうした「変化適応力 × 状況変容力」を持つ人材は、組織に安定した成果をもたらします。
相対評価(学歴・経験年数・前職企業)だけでは見極められないため、行動のレベルを可視化する評価軸が求められるのです。

01
2. コンピテンシーを5つの行動レベルで捉える

2-1. レベル1~3:与えられた状況の中だけで動く

行動レベルの下位(1〜3)は、「状況従属型」の行動です。

  • レベル1: 指示されたことをこなすだけ
  • レベル2: 与えられた役割を自律的に遂行する
  • レベル3: その場で最適な“判断”をして行動する

一見するとレベル3は優秀に見えますが、いずれも共通点は、 今ある状況を前提に行動している” ことです。
このタイプの人材は、状況が変われば成果も変わります。

例えば、

“良い上司”“良いチーム”“わかりやすい顧客”なら成果が出ても、
環境が悪化した瞬間にパフォーマンスが下がる傾向があります。

採用担当者の悩みでよく聞く 「いい人なんだけど、環境変わったら急に伸びなくなった」 は、このレベル帯の特徴です。

2-2. レベル4:自ら工夫して状況を変える

レベル4は、明確に上位レベルと位置づけられます。
ここから行動の性質が一変します。

  • 課題を自分で定義し
  • 障害を取り除き
  • 既存の方法に頼らず
  • 状況そのものを変えながら成果を出す

これがレベル4の行動です。
現場において、

  • トラブルが多い部署でも成果を出せる
  • 顧客やメンバーの意識を変えていく
  • 制約だらけの環境でも改善を進める
    こうした人物がまさにレベル4に該当します。

企業で「伸びる人」「任せられる人」と呼ばれるのは、ほぼこの層です。

2-3. レベル5:「新しい状況」そのものを創り出す行動

レベル5は、さらに上位の行動レベルです。
レベル4が「状況を変える人」なのに対し、
レベル5は、“まったく新しい状況そのものをつくり出す人” です。

例えば、

  • 新しい事業や仕組みを創り出す
  • 業界の常識を変えるような提案をする
  • 周囲が自然とその人の方向へ動き出す

といった行動が該当します。
これは意図して「レベル5を目指す」ことで実現するものではなく、 レベル4を継続して積み上げた結果として現れるもの とされています。
採用で狙うべきはレベル5人材ではなく、 レベル4行動を安定して出せる人材” であることを押さえておくと、採用の失敗を防げます。

02
3. レベル3の“そこそこ優秀”が企業を停滞させる

3-1. 判断はできるが変革しない“中庸人材”の増加

組織内で「優秀」と評されている人材の多くが、実はレベル3止まりである現実をご存じでしょうか?

レベル3の行動は、

  • 状況に応じて正しい判断ができる
  • 指示されずとも、自律的に動ける
    という点で、現場では重宝されがちです。

しかし、彼らは“今ある状況の中で、最適な選択をする”ことに長けているだけで、“その状況を良い方向へ変えよう”とはしないのが特徴です。
つまり、組織を動かす力は弱い。
判断力があるだけに「今は変えるべきではない」という理由づけも上手く、結果として、“賢く変わらない”中庸人材になってしまうのです。

3-2. なぜ企業には評論家タイプが多いのか?

レベル3人材が多くなる背景には、企業文化の影響があります。
たとえば、部下が新しい提案をしたときに、上司がこう返す場面はありませんか?

「いい案だと思う。でもウチのメンバーにはまだ早いかな」
「理想論だよね。現場はそこまで余裕ないんだ」

これは、レベル4の行動を受け止めずに打ち返してしまっている例です。
結果として、組織内で“変えようとする行動”が減り、「正しいことを見抜く力」ばかりが評価され、評論家のような社員が育ってしまいます。
これが、今の日本企業で最も多い人材タイプです。

3-3. レベル4人材の不在が“人材不況”を招く

経営層や人事が「最近の若手は受け身」「中堅が育たない」と感じている背景には、
行動のレベル”の偏りがあります。
実際、日常の業務のうち9割はレベル2〜3の行動で占められており、
本当に状況を動かすレベル4以上の行動が出るのは、ほんの一部だけです。
そして、その一部すらいない組織も少なくありません。
これは個人の能力の問題ではなく、環境と評価軸の問題です。
レベル4を発揮しても評価されない。
むしろ「空気を読まない」と疎まれる。
その結果、誰も変えようとしなくなり、
“そこそこ優秀だけど停滞する組織”が量産されるのです。

03
4. いま求められるのは「地に足のついた変革力」

4-1. VUCA時代に必要な“変化を前提に動ける力”

現代は、変化が常態化した VUCA(不確実・不安定)時代。
もはや「現状を守る」こと自体がリスクとされる時代です。
そんななかで求められるのは、
変化に適応するだけでなく、“変化を起こせる人材”です。

とくに採用現場では、以下のような視点で人材を見極めることが不可欠です:

  • 組織や顧客の“現状”に左右されず、改善提案ができるか
  • 環境が整っていなくても、まずやってみることができるか
  • 結果が出る前に、状況を“動かして”いけるか

これが、VUCA時代のレベル4人材の条件です。

4-2. レベル4行動は特別な才能ではない

「レベル4なんて、自分には無理だ」と感じる人もいるかもしれません。
しかし、レベル4の行動は特別な天才性や強烈なリーダーシップを必要としません。

実際には、

  • 目の前の状況に疑問を持ち
  • 自分にできる範囲で工夫を加え
  • 小さな一歩を踏み出す

これを継続的に積み重ねることこそが、レベル4の本質です。
派手な成果や大きな変革より、
地道な「自分なりの変化」の繰り返しが評価されるべきなのです。

4-3. レベル5は“狙って起こす”のではなく“積み重ねの結果”である

レベル5(新たな状況を創り出す行動)は、いきなり狙って発揮できるものではありません。
多くの採用担当者が「イノベーション人材がほしい」と言いますが、
イノベーションは派手な発想ではなく、“変化を起こし続けた先”に現れるものです。
重要なのは、まずレベル4行動を発揮できる人材を採用し、それを支援し続ける土壌を整えることです。
パラダイムを転換するような大胆な行動は、地に足のついた変革の先にしか訪れません。

5. レベル4行動ができる人の6つの特徴

5-1. 問題を「解決すればできること=課題」として捉える

レベル4行動ができる人の特徴の一つは、問題に直面した際の“思考の向き”にあります。
彼らは、「これはできないから無理だ」とは考えません。
「どうすればできるようになるか」を常に考えるため、
問題を「できない理由」ではなく、「解決すればできる“課題”」として捉えるのです。

この視点を持つことで、

  • 建設的なアイデアが出やすい
  • ネガティブな状況でも前に進める
  • 周囲にも好影響を与える

といった好循環が生まれます。

5-2. 小さく始められる「初動力」

どんなに立派な企画でも、最初の一歩を踏み出せなければ意味がありません。

レベル4人材の特徴は、
とにかくやってみる”という初動力にあります。

  • 完成度よりもまず動く
  • 小さくトライして、結果を見て修正する
  • 動きながら考える柔軟性がある

この姿勢が、状況を変える行動につながります。
慎重すぎる人材より、「まずは小さくやってみる」人材を採ることが、変革の第一歩となります。

5-3. 知識を加工・応用して発信する

レベル4人材は、知識の「受け手」ではなく「送り手」です。

  • 学んだ内容をただ理解するのではなく
  • 自分なりに咀嚼し、現場で応用し
  • 他者に発信・提案していく

このプロセスを自然に行います。
たとえば、セミナーで学んだ内容をそのまま使うのではなく、
「自社だったらこう応用できる」と翻訳して共有する。
こうした人材は、知識を価値に変換できるプロフェッショナルといえます。

5-4. 多方面にアンテナを張る「視野の広さ」

レベル4の行動には、視野の広さ=情報感度の高さが不可欠です。

  • 自分の仕事だけでなく、周囲の変化にも敏感
  • 顧客の反応、現場の声、業界動向などを捉える
  • 異なる視点から気づきを得て、自ら動く

これは単なる「情報収集力」ではなく、
覚醒レベルの高い状態(今ここへの集中と感度)と言えます。
目の前の業務に没頭するだけでなく、常に“変化の兆し”に目を向ける。
その姿勢が、状況を変えるヒントを生み出します。

5-5. 勘に頼らず、分析的に考える習慣

レベル4行動には、「なんとなく動く」ではなく、
「根拠を持って動く」という姿勢が伴います。

  • なぜ今これをするのか
  • どの方法が一番効果的か
  • ボトルネックはどこにあるか

このように、思考を分解し、筋道立てて判断・行動できるのがレベル4人材の特徴です。
感覚や経験だけに頼らず、論理的に状況を捉える視点を持っているため、
他者からの納得や共感も得やすく、巻き込み力にもつながります。

5-6. 自分の言葉でわかりやすく伝える力

最後の特徴は、「自分の言葉で語れる力」です。

レベル4人材は、

  • 本や研修の内容をそのまま引用せず
  • 自分の経験や価値観と結びつけて
  • わかりやすく相手に伝える力を持っています。

これは、単なるプレゼン能力ではありません。
「なぜ自分はこう考えるのか」「この提案にどういう背景があるのか」を、
腹落ちした言葉で語れるかどうかが問われるのです。
採用の場でも、表面的な“正解”ではなく、
「自分の考え」として発言できる人材を見極める視点が重要になります。

04
6. 採用で「レベル4人材」を見抜くには?

6-1. 面接だけでは見えにくい“状況変容力”

面接では、受け答えがしっかりしている人や、前向きな姿勢を見せる人に高評価を与えがちです。
しかし、レベル4に必要な「状況を変える力」は、表面的な受け答えでは見抜きにくいのが現実です。
というのも、レベル4は“その人の思考パターンと実行力”の組み合わせで発揮されるため、
質問内容によっては隠れてしまうことが多いのです。
だからこそ、面接の設計そのものを見直す必要があります。

6-2. 質問設計や行動評価をどう工夫するか

レベル4人材を見抜くためには、「過去のエピソード」に注目する質問設計が有効です。

たとえば以下のような設問が挙げられます:

  • 「やりづらい環境で成果を出した経験はありますか?」
  • 「そのとき、どんな工夫をしましたか?」
  • 「その工夫はどうやって思いついたのですか?」
  • 「状況が好転した要因をどう分析していますか?」

こうした質問は、 単なる成果よりも「どう動いたか」を深掘りする構造 になっています。
さらに、面接官自身が「レベル4とは何か」を理解しておくことで、 行動の“質”を見極める精度が高まります。

6-3. ポテンシャルではなく“再現性”に注目する視点

若手採用やポテンシャル採用の場面では、
つい「可能性がありそう」「伸びそう」といった感覚で評価しがちです。

しかし、今後は“再現性”がより重要になります。

  • この人は、どんな環境でも「変化を起こす行動」ができるか?
  • 再び同じ状況においても、似た工夫や改善行動をとるだろうか?
  • それは一時的なラッキーではなく、習慣化された行動特性か?

レベル4人材は、一発の成功ではなく、「いつでも変えようとする姿勢」を持っている人です。
採用の段階から、再現性ある行動に目を向けることで、組織の変革力は確実に高まっていきます。

05
THEME 01

サービスの
ご紹介

TG-WEBの適性検査シリーズは、行動・性格・能力の3側面から「変化を起こせる人材」を見極めます。
たとえば、コンピテンシー検査(A8)では状況変容力を、パーソナリティ検査(B5)では行動の安定性や協働力を、コーピング検査(G9)ではストレス下での対応力を測定。
どの環境でも成果を再現できる人材を、面接だけに頼らずに見抜くことができます。
貴社の採用精度向上に、ぜひご検討ください。

成果につながる行動を起こす力を測定

コンピテンシー適性検査 Another8

成果につながる行動を起こす力を測定
組織や部署にマッチする性格を測定

ベーシックパーソナリティ
適性検査 B5

組織や部署にマッチする性格を測定
ストレス対処力を測定

コーピング適性検査 G9

ストレス対処力を測定

TAGSタグ一覧

RANKINGランキング

TAGSタグ一覧

RANKINGランキング

スキルより重要な“状況を変える力”とは? 市場価値を決める行動特性を見極める